
確かに一つ一つの(または、ざくっと一気に全部の)暗示を解除してあげれば、終わりと思いますよね。でも、一つだけ忘れていることがありますよ。
暗示はトランス状態になった被験者に対してかけているわけですから、暗示を解消してあげたとしても被験者はまだトランス状態にあるわけです。このトランス状態から通常の覚醒した状態に戻してあげることが残っているのです。
ただ、よく、トランス状態を深くするために目を瞑らせて、暗示をかけて
「3つ数えたら目が覚めます。でも、先ほどの暗示は引き続きおきますからね。」
なんて、言って覚醒させたとしても、トランス状態に止まっている可能性があります。目が覚めたとしてもトランス状態にとどまっていることが多いのは、乱暴な例ですが、目覚めた直前に考えたくなくて二度寝している状態を思い出せばわかりやすいかと思いますし(なので目覚めた瞬間に暗示にかかりやすいのでお願い事が受け入れてもらいやすい)、特に催眠術のやり取りの際は、目がさめるという暗示に基づいて動いている可能性があるので
「目が覚めましたよね、スッキリしましたね」
といってすっきりした、と言っても、そもそも暗示で「目が醒めるときにすっきりと目覚めますよ」と言っていたら。。。暗示の効果の元にいる可能性が高いのです。
としたら、一連の被験を終えたときに、これで終わりますから、今までの暗示はもう起きませんよ、だから目を覚ましましょう、と言っても、後催眠暗示のように残る可能性は否めないと思ってかかった方が安全です。
一つ、こんなお話があります。とある遊園地のアトラクションで催眠術ショーがあったそうですが、そのときに、「すごい」という言葉を聞いたら深いトランス状態に落ちる、という暗示を被験者にかけたそうです。で、ショーも無事に終わったのですが、その後、ジェットコースターの行列で急に眠ってしまう人が何人もいたそうです。実は、ショーを見た後に並んだ人たちが、ここのジェットコースターはすごい、という会話を耳にしたことで、被験者でなかったにもかかわらず暗示にかかってしまっていたことから眠りにおちた、そうなのです。
ということは。。。あなたの声は、隣のテーブルで聞き耳を立てている人にも暗示をかけてしまえる、というだけでなく、終わり方をきっちりしないと残ってしまう、ということなのです。
ということで。残る前提でいるならば、その効果が残る限りにおいてはいい効果を被験してくれたお礼に残しておいてもいいのでは、と思う方がいいでしょうね。実際、私の好きな催眠術師の一人、城咲梁さんは、終わりにからなずこう言います。
「これで催眠術を終わりますので、今までの暗示は全ておわりになります。もう暗示の効果は起こりませんが、この後にもあなたにとっていい暗示はそのままあなたに残って効果があります。」
そうなんです。催眠術による暗示は本人が望むもの、受け入れたいと思うものならば長くその人の潜在意識に留まり、習慣化したり、それに基づく反応をするようになるのです。ならば、それを被験者の方へのお土産として持って行っていただきて、その後の人生が本人の望むほうに進む一助になるなら、催眠術師としてはその能力をうまく使ったと思えてくると思います。
まぁ、これは一つの考え方ですけどね。もしあなたがこれを読んで催眠術を掛けてみようと思うときに、思い出してもらえれば本望です。